星々の色を出して星団を華やかにしたい
散開星団の撮影は すばるや二重星団以外は あまり人気がありません。
でもいろんな方に望遠鏡で見てもらうと、皆さん「きれい!」と言われます。望遠鏡でひとつひとつの星をのぞけば、赤い星、オレンジの星、黄色い星、白い星、青白く感じる星、と色を感じることができます。
どうにかして 星の色を引き出して星団の画像を華やかにしたい!と考えチャレンジしてみました。
どうして色が出ないか
ふつう 暗い星まで写すために露出を掛けて撮影します。
でも時間を露出を掛け過ぎるとセンサーが飽和してしまい 星像は白く飛んでしまいます。このため白いばかりの味気ない星団画像となってしまいます。(このとき暗い星は相応の色で写っています)
どこかに星の色の情報が残っていないか
星像の中心付近はRGB各レベルが飽和し 結果として同じレベルで白くなります。
でも星像の周辺の未飽和部分にはRGBの差が残っていて、よく見ると白の周りに色が残っているのが確認できます。
この情報を使ってカラフルな星団画像を作れないかと
トライしてみました。
画像処理
私は、とっても古いPhotoshopを使ってます。
使う機能は
① ぼかしフィルタ(ガウス)
② RGB毎のレベル補正
③ 彩度調整
④ レイヤー機能(複製/比較明合成)
⑤ トーンカーブ
メインはレベル補正です。Photoshopでなくてもこれらの機能があればできるかもしれません。
それから、過度に彩度を上げるので科学的な意味は薄れます。
処理手順
光学系や空の状況など状況によって変わりますので、参考程度と考えてくだされば幸いです。よりよい方法やより高度な方法もあるかと思います。
1. 星の色の抽出
画像処理前の明るい星を拡大してみると、白い星像のまわりにわすかですが赤い色や青い色が確認できます。この色を使います。
① 撮影画像から レイヤーを複製します。
生の画像のほかに、星の周辺の色情報抽出用の複製レイヤーを作ります
② 複製レイヤーに ぼかしを掛けます。
ガウス/半径=3~20…画角と星像サイズによります、例では4
③ 彩度を上げます。(+50~+70 好みで、例では70)
④ 色合いを見ながら RGB別にレベル補正します。
入力レベルLow(左)をヒストグラム左端に合わせた上で 赤、青、緑か黄がバランス良くなるように、入力レベルHi(右)を150~230で調整
⑤ レイヤーを『比較明』で合成し、保存。
オリジナル(画像処理前)
③ばかし→彩度up
④調整した色合い
⑤比較明合成
2. 夜空のバイアス(かぶり)調整
街の光や薄明、月明かりや塵の多い赤みを帯びた空など、空の条件によって影響を受ける星以外の空の部分のかぶりは、RGB毎にバイアス調整を行い暗い空に近づけます。(影響が大きな場合には、「1.星の色の抽出」の前に行う方がよいこともあります)
① レベル補正でRGB個々に、
・入力レベルHi(右)を45程度にして背景のかぶりを強調させる
・入力レベルLow(左)をかぶりがなくなるまで徐々に上げる(バイアス調整)
・その後、入力レベルHi(右)を200~255に戻す
② RGB各色のバイアス(かぶり)調整後、保存。
③ 最後確認のため、にレベル補正RGB一括で入力レベルHi(右)を大きく下げてみてかぶりが残ってないか確認する(保存はしない)
3. 星の色の調整
ここからは個人的な好みで調整するので、出来上がりが大きく変わります。
① レベル補正の入力レベルMid(中)を 1(強調なし)~1.5に上げ、星像周辺の淡い色を強調する。例では1.5
② 彩度を 0(変更なし)~+50 に強調。例では+40
③ トーンカーブをRGB別に調整し、好みの色合いに最終調整します。これで完成です。
画像処理前と後の画像の比較です。
②彩度up
③トーンカーブで最終調整
4. 向き不向き
以上の処理をしても、カラフルになるものと、そうでないものがあります。素材(星団)そのものの影響が大きいです。
きれいにならないもの
・同色系の特に青い星々ばかりの星団(例、すばる、二重星団など)
・星と星の間隔が広いもの
・暗い星ばかりのもの
・空の条件がかなり悪いもの
きれいになったもの(経験)
・赤系/青系の混じる、星密度の高い、また星団周辺も星数が多い、赤/青の輝星がいくつかあるもの
画像処理は お化粧やお料理と同じようなもの
ノーメイクできれいな人がいるのも事実ですが、そうでない人もお化粧すればきれいに見える確率も上がります。(失礼)
撮影したものをそのままアウトプットする、これは料理に例えると、食材を買ってきてそのまま食卓に上げて食べさせるのに似た感じがします。そのまま食べられなくはないのですが、手間を掛け、味を加えてお料理すれば、美味しさは格段に上がります。
あくまで個人的意見ですが、撮影したままの画像にお化粧やお料理を施し、きれいにしたいのです。
似て異なるものかもしれませんが
Hαで撮した太陽を疑似カラーしたものも似てます。もともと特定の赤色一色のモノクロ画像です。でも太陽本体を黄色やその他の色にしたり、プロミネンスを赤くしたりしたものは、見てて太陽っぽくてインパクトがあります。
赤外線で光る散光星雲を赤く表現したものもそうかも知れません。赤外線は本来見えません。人間にとって無色透明(?)を赤の向こうの色として赤く表現することで、美しい宇宙が表現できてます。